あらかじめ一年生の割合が多いと聞いていたので、高校を卒業して間もない、働いた経験がほとんどない、そんな学生たちに何をどう伝えたらよいのか?ということが今回の課題でした。
そこで、会社員としての九年間、会社役員としての七年間で感じたことや、経験豊かな先輩・友人たちから学んだことを元ネタに起業にまつわる質問を投げかけて、一緒に考えるというスタイルでやってみることにしました。題して「いま聞いてみたい7つの質問」タイトルはもうちょっと時間かけたらよかったかなと…
例えば、「どんなことに取り組んでいますか?」という質問をして、それぞれのビジネスアイデアについて話してもらうのですが、具体的に話す人もいれば、抽象的な人もいる。何人かに聞いたところで、「自分のやっていることの伝え方として Elevator Pitch っていう考え方があって…」というように事業内容を15秒で印象付ける大切さについて話す。この流れなら、内容をより身近に感じて理解しやすくなるんじゃないかというのが狙いです。
他には、「どんな資本を持っていますか?」や、「あなたにとって成功とは何ですか?」なんて質問をしてみました。
案の定、資本というとお金、人、施設といった教科書通りのものが返ってきます。じゃあ、資本が事業を前に進めるための原動力となるものだとすると他にどんなものがありますか?とヒントを出して聞いてみますが、なかなか思いつかないようです。アイデアもそうだし、熱意や行動力、知識、さらには共感やその人自身の魅力など、起業するときの資本となるものはいろいろとあります。一番重要な資本は熱意かと思いますが、共感なんていうのは今っぽくて、やりたいことがみんなの共感を得られれば、クラウドファンディングを使って事業を始められますから、アルバイトしてお金ためる必要はなくなってきています。
あと、一体どんな返事がくるのかな?と興味があった「努力は報われますか?」という質問。報われると思う、に誰も手を上げない。報われないですか?報われると思うひと?と再度聞いてもやっぱり誰も手を上げない。
困難な時代を生きる君たちへ(内田樹の研究所)
で語られているような、努力と結果の関係の希薄化感みたいなものが共通の感覚としてあるのかな?と思う一方で、話しながら画面に写していたHONDAの「負けるもんか」が、思いのほか共感を得ていたところをみると、努力自体に冷めているという訳でもなさそうでした。
以前、セルジオ越後さんが「フィールドに立てる人より、立てない人の方が多いんです。だから、フィールドよりもスタンドの方が広いんです。これからの日本は、もっと(プロサッカー選手を目指すという)プロセスにフォーカスをすべきです。」という講演をされていたのが印象的でしたが、起業家だけでなく、これからのサラリーマンにとってもプロセスにもっとフォーカスするという着眼点は大切で、そのことについて何か伝わるものかあればというのがここでの主旨でした。
まあ、とはいえ「道徳のない経済は罪であり、経済のない道徳は寝言である。」と二ノ宮金次郎先生も仰ってる通り、商売である以上、理想的過ぎてもいけないよ。ということを伝え忘れたのは痛かったですが…。
講義の締めくくりには「起業できる人とは、どんな人ですか?」という質問をしてみました。
精神力の強い人、計画力のある人など返ってきますが、個人的には、アントレプレナー論を担当されている武田先生の受け売りで「そうした星の元に生まれた人」だと思っています。
選ばれた人のみがやれる崇高な職業…なんていう話ではなくて、これは生まれつきの性分というか、起業準備中です!という勉強歴10年強の人や、こんな会社辞めていつか独立する…が口癖の順調に昇進を果たす課長みたいなケースが結構多くて、なんかできない人はずっとできないのかなと。なので、起業するという一歩を踏み出せるかどうかは、性分なんだと思う訳です。
ただ、誤解を招くといけないので補足したのは、起業する人がサラリーマンより優れてるとか、そういうことではないということ。むしろ起業する人の方が、社会不適合な感じに溢れていたりします。個人的にも八時半に出社とか無理でしたし…。自分の力を使うポジションの違いでしかないということです。
こんな感じで、答えなんて無いテーマについて学生のみなさんと一緒に考える時間が持てたのはすごく良かったなと感じています。たくさん質問もしてくれて嬉しかったです。オマケですが、将来、自分で会社を起こすにせよ、どこかに勤めるにせよ、人生の分岐点で読むといいかも?と思っている二冊の書籍を紹介して、 お時間となりました。
アルケミスト―夢を旅した少年 (角川文庫―角川文庫ソフィア)
イノベーション・オブ・ライフ ハーバード・ビジネススクールを巣立つ君たちへ
ITの世界なんかは特にそうですが、世界を変える!が口癖みたいになっているところがあって、考えてるより、議論してるより、動け。っていう風潮もあって、まあごもっともなんですが、いくらお金が動いたのか?とか、どんなルールや仕組みができたのか?という物質主義的なことだけじゃなくて、人の考えや気持ちを動かすことも世界を変えていることのひとつだと。そういう意味で、この二冊は世界を変えているといえる書籍です。
今年もこのような貴重な機会をいただいた武田先生、ありがとうございました。来年も、よろしくお願い致します(笑