2013年11月13日水曜日

マレーシア(クアラルンプール)現地視察レポート

11月8日~11日の4日間、マレーシアのクアラルンプールに滞在して現地の様子を見てきました。
一部からは『慰安旅行』と呼ばれている今回の旅ですが、現地で得た情報についてみなさんにシェアしていきたいと思いますので、ご興味のある方はご一読ください。

※ 誤認等ありましたらご連絡いただけるとありがたいです。















東京の成田からマレーシアまでのフライト時間は7時間半。現在、中部国際空港からの直行便はありませんが、既に就航の予定があるそうで今後は中部からのアクセスも近くなります。時差は1時間なので時差ボケを感じることはありません。が、実はこの時差、東京市場に合わせてかなり無理をして設定しているそうで、ほんとは2時間くらいあるようです。(実際、7時半になってようやく空が明るみ初めてくるので最初そのことを知らなかった僕は、えらく日ののぼりが遅い国だな。と思ってました。)


マレーシアの国土は、日本とほぼ同じ大きさですが、人口は3,000万人弱(外国人含む)。「この人口の少なさが少し残念なところ」と現地滞在の方が言われてました。30歳未満が55%ではあるものの人口ピラミッドは減少傾向にあって、国としてのポテンシャルを非常に感じるだけに確かに残念かもしれません。ちなみに今回訪問したクアラルンプールの市域人口は約180万人、そこを中心とした都市圏の人口となると720万人となり、日本でいうと愛知県と同じくらいの規模になります。(ちなみにマレーシア在住の日本人は2万人くらいだそうです。)
























写真は、マスメッド・ジャメ駅周辺のマレー系の人たちが多くいる地域で撮影したものですが、3,000万人の人口のうち約60%(1,850万人)がこのマレー系の人たち。その他にチャイニーズ系が約20%(650万人)で、インド系が6%(190万人)といった構成です(クアラルンプール市内は割合が変わるので後述)。シンガポールと同様にクアラルンプールでも同じ人種の人たちが特定の地域に固まって生活している感じです。これは、イギリスの植民地であったことによる影響が大きいと思います。自動車も左側通行ですし。

市内では、ほとんどの場所で英語が通じます。Malaysian Englishかつ、ネイティブランゲージ寄りのなまりはありますが、少し話しているうちに特有のイントネーションが掴めてきます。なので、言葉に関して苦労を感じることはほとんどありませんでした。マレーシアの人たちは、状況によって言葉を使い分けているそうで、チャイニーズ系なら家族と話すときは中国語、外で話す時は英語、という感じだそうです。余談ですが、現地でマレーシア人の友人の結婚式への招待を受けていたので参加してきましたが、その際も司会の女性がまずは中国語で、次に英語で進行をしていましたし、新郎新婦のスピーチは英語でした。

マレーシアで10年近く企業経営をされている方曰く、マレーシアの採用市場が売り手市場(働き手がとても優位)である理由の一つが、最低でもマルチリンガルなことだそうです。複数の国にまたがってサービスを提供する時代にこうした人材が、分かりやすいところでいうとコールセンターやコミュニティ運営などで求められていて、さらに上を目指すならシンガポールに出て仕事をすることもできるからです。


























次に経済ですが、クアラルンプールの商業の中心は、Bukit Bingtang(ブキ・ビンタン)というところにあります。ざっくりいうと名古屋の栄です。知らない方には伝わらない例えで申し訳ないですが、雰囲気や街のスピードもまさにそんな感じです。駅の周辺エリアにはいくつかの大きなショッピングモールがあって大勢の人で賑っています。ただ、どうみても人口や購買力とミスマッチを起こしていて、実際のところ流行らないモールはすぐにテナントがガラガラになって廃れてしまうようです。国として右肩上がりの経済しか経験していないということもあって、これからもどんどん作っていく方針だそうで、この先数年で20近いのモールの建設が予定されているそうです。




























国としての人口構成のところで、マレー系6割、チャイニーズ系2割と書きましたが、クアラルンプールだけだと共に4割くらいになるそうで、チャイニーズ系の割合がかなり増えます。ビジネスを考えるときは、こっちの数字を気にする方がいいかなと思います。所得は、中堅技術者(日本で年収600万円くらいの技術者イメージ)で月額10万円弱。管理職クラスだと月額20万円くらいになります。これくらいの所得になってくると、生活コストの低さもあるので可処分所得は日本の若者よりも高いと思われます。

「政治はマレー系が握っていて、経済はチャイニーズ系が引っ張っている」らしく、経済においてはマレー系が足を引っ張っている印象(稼ごうよ!というチャイニーズ系と、ほどほどでいいんだよ。というマレー系)だそうです。事実、購買力もチャイニーズ系の方が高く、中間層(マレーシアは中間層が分厚い)の家計月収は、チャイニーズ系で平均17万円強、マレー系は12万円強です。上位層になると、チャイニーズ系の45万円強に対して、マレー系は32万弱とその差は広がります。

4日間で、かなりの数のモールを歩いてきましたが、ファッションでも電化製品でも日本でおなじみのブランドが並んでいますし、海外からのブランドがとても多いです。マレーシアの人は、海外のよいものを取り入れることに積極的(逆に言うと自分たちで作ろうとしないのが問題)だそうで、日本のプロダクトもたくさんみかけました。特にキャラクター系において日本のコンテンツは強いなというのを改めて実感します。
























あと、コートなどの冬服がディスプレイされていて、今の時期マレーシアの日中の気温は30度くらいで、電車を待っているだけで汗ばんでくるのにコート?と不思議に思っていたのですが、現地滞在の方曰く、こうした服を買える=海外に行けることを意味しているらしくステータスのひとつだとか。マレーシアの人は見栄っ張りなところがあるとも言っていました。
























街は日没後から活気づく感じで、結構遅い時間になってもたくさんの人が歩いています。日中は気温が高いですが、夜になると25度くらいになって過ごしやすいのがその理由だと思います。(もちろん場所によるでしょうけども)夜の治安が悪い印象はあまりなくて、裏通りというかほとんど人の通りが無いようなところでも女性がひとりで歩いていました。電車は大体0時過ぎまで運行していて、タクシーはもっと遅い時間までいます。このことを知っていたら初日にもっと街を見てあるけたのになと思っています。
























次の写真は、コミューターの女性専用車両の様子。クアラルンプールで特筆すべきことのひとつに交通インフラがあります。非常に整っていて名古屋の栄よりも質、価格ともに断然充実しています。空港から市内までは、KLIA Express という高速列車が30分で結んでいて価格は1,000円程度。市内に入るとコミューターと呼ばれる電車のほか、モノレール、バス、タクシーがあります。コミューターは格段に安くて1駅30円。KLセントラル駅から30分ほど離れたスバン・ジャヤ駅へ行っても50円程度でした。コミューターのチケットには2種類あって、自動販売機で買うとプラスチックのコイン型のものが出てきて、窓口で買うとカードを渡されます。出口では、コイン型のチケットをゲートに入れるか、係員にカードを渡します。


















タクシーの料金は交渉が可能です。と、いうか交渉してから乗らないと後で高い金額を要求される可能性があります。実際、聞かないで乗ってしまって倍ぐらい払わされました。ただ、こう書くとやっぱ海外のタクシーは怖いな。ってなりますが、基本ぼったくりの無い、平和な日本のタクシーの料金ほうがよっぽど高いです。倍払わされて日本の1/2です。距離的に。市内のタクシーの運転手とは、常に20リンギットなのか15リンギットなのかで戦うという150円の攻防が繰り広げられます。どうでもいいといえばいいんですが、なぜか交渉しちゃうんですよね。

なお個人的な移動手段としては車だそうです。タクシーの運転手に安い車買うならどれくらいのイメージかを聞いたところ、まあ100万円くらいかな。と、いう感じの回答でしたので、前述の所得からいっても、これであれば十分に買える値段です。

















食事についても少し。1日目に宿泊したホテルはリゾートホテルっぽい感じのところで、21時過ぎに到着して周囲に何もなさそうだったので、ホテル内にある日本食レストランでとることにしたのですが、天ざる、しいたけの吸い物、肉じゃが、ビールで3,800円でした。味はというと、全般的に出汁と塩が入ってない感じで味気無かったです。寿司を頼もうかと思いましたが、サーモン2貫で600円と聞いて諦めました。日本食=高級イメージなんだと思いますが、この味でこの値段は日本人の僕にとっては本当に残念です。ただ、日本の味そのままが海外で合うかどうか?や、僕が東海地方に住んでいて塩分の多い味に慣れているというのもあって判断は難しいです。ちなみに朝食のビュッフェにミソスープというのがあったので飲んでみたら赤味噌だったという。嬉しいけど、よく分からんです。

マレーシア訪問以前は、料理がすべて辛いと思っていたので、辛いのが苦手な僕としては、食べるものあるかな・・・と心配していたんですが、特にチェーン店などではメニューに辛さの表記がされてましたし、辛い料理は全体の半分以下の感じでした。屋台で食べた料理も安くて美味しかったです。ちょっとしたこと、匂いとか味が気になると食べられないというデリケートな体質ですが、まったく問題なかったです。あと、KLセントラル駅という交通の要所周辺には、400店舗以上の日本食があるそうです。ただ、ホテル以外では日本食を食べてないので味はわかりません。

































あと、マレー系の人たちは基本的にイスラム教を信仰しているため、お酒が飲めなかったり(そもそもマレーシア人はあまりお酒を飲まないそうですが)、豚肉などが食べられなかったりと食事に対して制限があります。そのためにハラール(HALAL)というイスラム法上で食べられる食品だということを認証する制度があります。牛肉や鶏肉でもこの認証がないと食べられません。下の画像はスーパーの一角ですが、ノン・ハラルな食材を扱うコーナーが特別に設けられていました。



















現地で食品系のビジネスをする上でこのハラル認証は重要ですが、難点は認証の取得にかかる費用が高いことです。あと、いまこれをビジネスとして海外に押し出していこうという動きがあるそうで、日本で言うところの個人情報保護マークの認証取得などと同じイメージかなと思います。前述しましたが、クアラルンプール市内にはチャイニーズ系が半数近くいて購買力もあるので、日本の食品メーカーは、まずそこをターゲットにするというのもひとつの手だということを聞きました。



あと、この流れで、マレーシア進出(する予定ないけど、したい人向け)についてのことを書きたいと思いますが、まずはコスト面から。東南アジアといえばシンガポールが拠点として思い浮かびます。現地視察にも行きましたが、オーチャード周辺は言葉の違う東京という印象を持ちました。非常に発展している半面、いろいろと高い。例えば事務所の家賃でいうと、名古屋が1坪平均1.3万くらいだとすると、シンガポールが2.7万円、クアラルンプールは0.7万円です。店舗スペースは、シンガポールの8.8万円に対してクアラルンプールが0.2万円と安く、これは現地滞在の方が進出メリットの一つだとあげていました。同じく電気代も名古屋・シンガポールの1/2、水道料金は名古屋の1/5、シンガポールの1/4で済みます。シンガポールのメリットのひとつは法人税で17%ですが、日本が30%、クアラルンプールは22.5%となっています。

あと、現地でIT系の企業に訪問しましたが、いま一番進出するならITじゃないか?ということを言われてました。IT企業向けの特別政策としては、MSC Pioneer Status というのがあって、これを取得すると(国籍関係なく!)従業員に対していくらでもVisaを発行できるようになるそうです。あと、前述していますが、いくつかの言葉も話せるのでITに向いている、と。

その他、IT系の情報として、Facebook の人気が非常に高くてマーケティングで主に使われていること、街を歩いていると頻繁にLINEのCMやグッズを見かけること、スマートフォン文化であること、ゲームは30代以下の男性がほとんどである、ということも聞きました。

日本人の東南アジアでのコミュニティは狭くて仕事をしているとすぐに繋がっていくそうで、私の知人の方を何名か名前を出してみたところ、みなさんについてご存知でした。




















【2013.11.15 追記】
あと、もう少し思い出したことがあるので、追記しておきます。

Wi-Fiについて
空港を始め、KLIA ExpressやKTMコミューターなどの交通機関、ホテル、モールやレストランなどクアラルンプール市内のいたるところで無料のWi-Fiが飛んでいます。ホテルのWi-Fiは快適に使えましたが、空港や街中のWi-Fiはプチプチと切断されたり、突然遅くなったりすることが何回かありました。今回モバイルWi-Fi(wi-ho)を日本でレンタルしてもっていきましたが、郊外であっても概ね問題ありませんでした。

(マレーシア関係ないですが)中部国際空港空港のテレコムスクエア(wi-ho受取)窓口ですが、僕がいったときには担当者が1人しかおらず、前に並んでいた人が当日レンタルの手続きをしていて、それが結構時間がかかるので思わぬ時間ロスとなりました。後ろにも列ができてましたので、余裕を持って行くか前日に家まで届けておいてもらうほうがよいと思います。


左手について
イスラム教では左の手は不浄の手だということで、ガイドブックなどには物を渡したり、人に触ったりする時には絶対に使わない方がいいと書かれています。実際のところ(現地滞在の方はあんまり気にしていないようでしたが)、ホテルの受付の人は必ず左手で右手の手首を握って、右手でカードを受け取ったり、返したりしてました。あと、食事では右手にスプーン、左手にフォークを持って、口に食べ物を運ぶ時は右手で運んでいるように思えましたが、これは気にしすぎかもしれません。


トイレ
マレーシアのトイレには基本的に ハンドシャワー(場所によってはホース)がついています。これで用を足したあと洗い流すわけですが、ホテルのとか比較的キレイなトイレはいいですが、街中のトイレだと衛生的な意味でホースのどこを持ったらいいかちょっと悩みます。あと、トイレットペーパーは設置されていないことが多いです。そのためか、僕が使ったトイレはどれも流す力が弱くて、日本のイメージでカラカラ、カラカラと紙を使っていたら、詰まりそうになってしまって便座を決壊するまであと1cmというところでなんとか流れたということがありました。マレーシアでの一番のピンチでした。




























最後に。

マレーシアについて一言でいうなら「ちょうどよいバランス加減で発展している国で、日本人には住みやすそう。」です。

まず、英語が通じる。医療も悪くない(高度医療はシンガポールになるけど)。街も名古屋みたいな感じで発展していて交通の便も悪くない。治安も心配するほどではないなど。訪問先の社長が「他にいいところがあったら別にマレーシアでなくてもいいけど、いまのところここ。」という話をしていたり、空港に向かう電車で隣に座ったフランス出身の男性(東南アジアを中心に 40年くらい仕事をしていて、神戸や横浜にも来たことがあって、奥さんがマレーシア人)も、「いろいろ国をまわったけ どマレーシアが一番。それなりに発展していて、治安も悪くない、生活するコスト高くもない。」といっていたことなどからもそのことが窺い知れます。




















4日間という短い滞在でしたが、充実した日々を送ることができました。空いた時間はすべて街を歩きました。とにかく歩けば歩いただけ、ふとした瞬間にあるそこに住む人の暮らしが見えてきます。人の集まりが街であり国であるので、建物や乗り物を見ることも重要ですが、街の人たちがどんな感じで暮らしているのかを少しでも多く感じることが、その街や国をより知ることにつながっていくと思っています。なので、3回くらい倒れそうになりましたけど本当に歩けるだけ歩いてきました。とはいえ、やはり数日の滞在では美味しいとこ取りになってしまう部分もあって、このブログでお伝えできることは、マレーシアのほんの一部ではありますが、何かの参考になればと思います。


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