「mt」と聞いて何を思い浮かべますか?
IT系の人であれば、記憶媒体かコンテンツ管理システム(MovableType)なんかを思い浮かべそうですが、ここでいう「mt」とはマスキングテープのこと。塗装のはみ出しを防ぐための業務用のテープで、内装工事などでよく見かけるので一度は見たことがあるのではないかと思います。
マスキングテープには、塗装の色と下地との見分けをつけるために色にバリエーションがあるのですが、東京に住む3人の女性が、その業務用テープをラッピングやデコレーション、メモ用紙といった雑貨用途で使っているうちにその魅力に惹かれていき、それらの事例をまとめたMasking Tape Guide Book(通称MTGB)という一冊の本を作ります。
マスキングテープラブな3人は、さらにこの本を当時マスキングテープを生産していた主要メーカー8社に送り、「工場見学をさせて欲しい」と頼みます。しかし、その声に反応したのは、岡山県のテープメーカー カモ井加工紙のたった1社。
"マスキングテープを可愛いと表現しているのを見て正直気持ち悪いと思った"
"彼女たちの感覚がまったく理解できなかった"
"一部マニアの楽しみとしか受け取らなかった"
"単価30円のものがカラフルにしただけで150円で売られ続くと思わなかった"
他の7社は、彼女たちの意見に対してこう思ったそうです。カモ井加工紙が、この消費者コミュニティの声をまずは受け入れたのとは対照的に、
-(略)それに対して他社は「頼みもしない(unsolicited)アイデア」に対して最初から後ろ向きだった。
ことが、目の前に置かれた20億の市場を生み出すチャンスを掴むか逃すかの明暗を分けました。それ以外にも、小ロット多品種に対応する生産ラインを作ること、業務用と個人用という流通ルートの違いなど実際に具体化する上での問題も大きかったようですが、取り組む姿勢の違いが、この問題を解決できたかどうか(解決する気になったかどうか)に影響したと思います。
カラーバリエーションや種類も豊富になった『mt』ですが、日本だけでなく海外でも認められる商品になっています。
PRESIDENTの記事には、「外部にある革新の源泉とのインターフェース」と表現されていますが、顧客や社員、コミュニティの中にある智恵をいかに企業活動に取込むには、co-creation(共創)の仕組みにプラスして、企業としての "まずは受け入れてみる" というオープンな姿勢が大切ですね。