「正直なところ、Analyticsには懐疑的なんです。ページビューとか、滞在時間とか。自分がNOYESの熱心なファンとしての目でサイトがつまらないと感じたらバサッと変更します。」 先日、『NOYES』の牧社長にお会いしたときの言葉です。
『NOYES』は、名古屋にあるソファ専門店。自社で工場を持っていて、職人さんが手仕事でひとつひとつ制作にあたっています。販売は、名古屋と東京にあるショールームとウェブサイト。ウェブでの売上は "ショールーム2つを足すと勝てないくらいの額" だそうですが、座り心地や肌触りといったソファを買う上で重要な要素を伝えられないウェブで、それとは別の購買動機を生み出していることを考えると、スゴイことだと思います。
自分はウェブについて素人なので-。という牧社長ですが、
「ウェブで伝えるべき点は、ヒトだと思っています。ヒト、コト、モノとある中で、ヒトをいかに伝えていくかを常に考えています。」
「一時期、マーケティングに集中したことがあります。ソファを届けるべきところのターゲティングとか、そんな。でも、止めました。マーケティングにシフトしたらサイトがつまらなくなった。やっぱり自分が楽しめないとダメだね。」
「導線改善とかも、実は懐疑的です。本当に欲しいものは、少々面倒でも買うでしょ?だから、いかに欲しい!って思ってもらえるかどうか。」
など、思考錯誤の中で掴んだ着眼点は、ウェブの専門家が推奨している数値からのアプローチでなく、指標 "俺" といった感覚的なものですが、本質を突いているように感じます。
一人のファンとしてサイトを見た時に感じたことを大切にするという、直感。そして、サイトへの熱意。サイトを作っている人の熱意って、不思議なんですが、まるで匂いのように訪問者に嗅ぎとられてしまう。でも、その表現の仕方って言葉で説明ができない。細部にまで徹底したこだわりを持って、気に入るまで作って直す、飽きたら壊して作るを繰り返していく中で生まれてくるものではないかと思います。
NOYESでは、一般的なECサイトのように商品の機能面だけを伝えるのではなく、
「NOYESソファのあるお部屋のお写真」
「NOYES KIDS 2012」
「ソファで読み聞かせたい絵本コンクール」
といった、ソファを中心にその魅力を伝える参加型のコンテンツに力を入れていて、個人的に好きだったのは、「Thank you, NOYES」というスタッフの部屋とNOYESソファを紹介するコンテンツ。社員のみなさんが自社の製品を愛用している姿には安心感を覚えます。もっと前面に出していいコンテンツだと思いました。ECサイトのひとつのトレンドとして "雑誌化" のような流れがありますが、自然とそうした構成になっているところに驚きました。
お話していて感じたのは、これだという答えを掴んでいる訳ではなく、まだ試行錯誤の中ではあるものの、自分のモノサシを軸にした日々の改善に裏付けされた根強さのような感覚でした。それと同時にウェブが、技術者のフェーズを終えて、人間力、コンテンツ力のフェーズになったんだと改めて感じました。