2012年10月22日月曜日

旅のプランをco-creation(共創)する『共感トラベラー』

旅行というと、代理店の店頭に置かれたパンフレットをめくりながら日程や予算にあうプランを見つけて申し込むというのが一般的。もっと自分にあった旅をしたいと思っても、チケットやホテルを自分で手配する個人旅行はハードルが高い。そんな、"○○な旅をしたい" という想いを実現できるのが『共感トラベラー』というウェブサイトです。


























これまでの旅行というものにco-creation(共創)の考え方をプラスしたものが『共感トラベラー』といった感じ。実際のアイデアの商品化は、JTBグランドツアー&サービスがサポートするそうです。

投稿されている旅のプランをご紹介すると、「飛行機が苦手でもアメリカやオーストラリアに行きたい!」「自転車王国・ベルギーフランドル地方を自転車で走ろう!」「100を切れない方限定 上手じゃないけどハワイでゴルフをしたい」 といったユニークなものが並んでいます。



共感トラベラーの参加方法は2つあって、ひとつは自分でプランを作ること、もうひとつは他の人が作ったプランに参加することです。自分で旅を作りたいときは、プラン名を決めて、なぜその旅をしたいのかという想いを書くだけで新しい旅のアイデアとして登録できます。そして、共感トラベラーでは、この "旅への想い" がとても大切になります。なぜなら、一定数の共感が集まらなければ商品化はされないからです。

プランができたら、みんなで旅の内容を決めるためのトピックを作成します。「日程を決めよう」「予算を決めよう」「自己紹介しよう」など旅を作っていくためのトピックを用意してディスカッションしたり、いくつかある候補への投票を実施することが可能になっています。その他にも、まとめページや、参考情報ページなど旅作りをサポートする機能が用意されています。

まさに参加型で旅行ができあがっていく様子は見ていて楽しいです。旅行づくりのプロセスでファンを集めながら、最後に自分たちで作った旅行に参加して感動できるという仕組みも素敵です。


何かをつくるためのオープンな場を提供することが、会議室では見つけられない消費者の中にある潜在的なニーズに気付くきっかけを生みます。これはco-creation(共創)の大きなメリットのひとつ。共感トラベラーはその可能性を実感できるウェブサイトです。


2012年10月12日金曜日

co-creation(共創)型小説プロジェクト『The Naked Writer Project』

イギリスの作家シルヴィア・ハートマン(Silvia Hartmann)が、執筆途中の小説を読者に公開しながら共に書き上げるというプロジェクト『The Naked Writer Project』を行っています。

































現在、執筆されているのは"The Dragon Load" というタイトルの小説。狙いは、読者が執筆中の原稿を見ることができるだけではなく、物語の流れに対して感想をフィードバックできるようにすることで、著者が思いつかなかった展開を見出そうというものです。

著者自身も、これまでの著者と読者の関係の境界線を広げるられることや、自分っぽい展開になってしまいがちな物語が、読者と共にどうのように展開していくのかが楽しみで、これは双方にとって貴重な機会だと述べています。


プラットフォームとして活用されているのは、Google Drive。原稿はこちらで公開されていて、フィードバックは、Google Drive上のコメント機能のほか、TwitterやFecebookといったソーシャルメディアを活用しています。Live原稿には、この記事を書いているときにも10名程度の閲覧者がいました。


こうした新しい取り組みの書籍としてグランズウェル ソーシャルテクノロジーによる企業戦略 (Harvard Business School Press) や、ビジネスモデル・ジェネレーション ビジネスモデル設計書などが記憶にあります。(当時は)読者とのコミュニティページが用意されていて、読了後も書籍の内容をもとに会話ができるようになっていました。


読者に新しい体験をもたらしながら、物語展開に読者の発想を取り入れ、著者の知識や経験、読者理解からできてしまう無意識の壁を壊していこうというところにco-creation(共創)的発想を感じます。

2012年10月3日水曜日

社外にあるイノベーションの源泉とのインターフェース『PRESIDENT 2012.10.15号』

PRESIDENT 2012.10.15号に面白い記事を見つけました。目の前に置かれた20億の市場を作るチャンスを活せた企業と逃した企業、その明暗を分けたものとは-そんな、co-creation(共創)の良い事例です。





「mt」と聞いて何を思い浮かべますか?

IT系の人であれば、記憶媒体かコンテンツ管理システム(MovableType)なんかを思い浮かべそうですが、ここでいう「mt」とはマスキングテープのこと。塗装のはみ出しを防ぐための業務用のテープで、内装工事などでよく見かけるので一度は見たことがあるのではないかと思います。

マスキングテープには、塗装の色と下地との見分けをつけるために色にバリエーションがあるのですが、東京に住む3人の女性が、その業務用テープをラッピングやデコレーション、メモ用紙といった雑貨用途で使っているうちにその魅力に惹かれていき、それらの事例をまとめたMasking Tape Guide Book(通称MTGB)という一冊の本を作ります。
マスキングテープラブな3人は、さらにこの本を当時マスキングテープを生産していた主要メーカー8社に送り、「工場見学をさせて欲しい」と頼みます。しかし、その声に反応したのは、岡山県のテープメーカー カモ井加工紙のたった1社。

 "マスキングテープを可愛いと表現しているのを見て正直気持ち悪いと思った"
 "彼女たちの感覚がまったく理解できなかった"
 "一部マニアの楽しみとしか受け取らなかった"
 "単価30円のものがカラフルにしただけで150円で売られ続くと思わなかった"

他の7社は、彼女たちの意見に対してこう思ったそうです。カモ井加工紙が、この消費者コミュニティの声をまずは受け入れたのとは対照的に、

-(略)それに対して他社は「頼みもしない(unsolicited)アイデア」に対して最初から後ろ向きだった。

ことが、目の前に置かれた20億の市場を生み出すチャンスを掴むか逃すかの明暗を分けました。それ以外にも、小ロット多品種に対応する生産ラインを作ること、業務用と個人用という流通ルートの違いなど実際に具体化する上での問題も大きかったようですが、取り組む姿勢の違いが、この問題を解決できたかどうか(解決する気になったかどうか)に影響したと思います。



























カラーバリエーションや種類も豊富になった『mt』ですが、日本だけでなく海外でも認められる商品になっています。

PRESIDENTの記事には、「外部にある革新の源泉とのインターフェース」と表現されていますが、顧客や社員、コミュニティの中にある智恵をいかに企業活動に取込むには、co-creation(共創)の仕組みにプラスして、企業としての "まずは受け入れてみる" というオープンな姿勢が大切ですね。





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